地政学的な不透明感、原油価格に下押し圧力続く

原油価格は5か月ぶりの安値圏にとどまっている。トレーダーたちは、インドのエネルギー貿易に関する相反する政治的シグナルを整理しようと苦心している。
混乱の発端は、ドナルド・トランプ米大統領が「インドはロシア産原油の購入を全面的に停止する」と発言したことだった。この発言を受けて一時的に価格が上昇したが、インドの製油業者による否定で急速に落ち着いた。ムンバイの業界関係者によれば、実際には「購入停止ではなく、一部削減」にとどまる見込みだという。
ワシントンからの曖昧なメッセージ
ニューデリーからの正式な声明がないため、市場は明確な方向感を失った。
一時、トランプ氏の発言が**供給逼迫(supply squeeze)**につながるとの思惑が広がったが、インドが購入パターンを急に変える意思がないと判明すると、センチメントは冷え込んだ。
ウクライナ戦争以降、**G7価格上限(price cap)**のもとで割安となったロシア原油を、インドと中国が主要な買い手として吸収してきた。これにより、ロシアは安定したエネルギー収益を確保しており、ワシントンの懸念が高まっている。
インドの貿易政策に圧力
米政府当局者は、インド企業がロシアの割引恩恵を「過度に享受し」、クレムリンの資金源を支えていると非難している。この緊張は両国間の貿易協議にも影を落としているが、インドの通商長官は米国とのエネルギー協力を最大150億ドル拡大する用意があると発言した。
一方、英国はロシアの石油ネットワークへの制裁を強化し、主要生産者に加え、中国の仲介業者およびインドの製油会社Nayara Energyを対象に加えた。西側諸国は、クレムリンのペトロダラーへのアクセスを制限する制裁体制の抜け穴を塞ごうとしている。
需要懸念、下落を加速
地政学リスクに加え、需要減退への懸念も価格下落を加速させている。
米中間の貿易摩擦の激化で、世界最大の原油輸入国2国の消費見通しが不透明となった。主要トレーディングハウスは、年末までに**供給過剰(supply glut)**が発生する可能性を警告しており、価格下押し圧力が続くと見られる。
WTI原油(West Texas Intermediate)は一時的に反発したものの、直近では1バレル=58ドル前後で取引されている。インドの立場が明確になり、世界の需給見通しがはっきりするまでは、トレーダーは新規ポジションを控える構えだ。
現在、市場は不透明な地政学的状況の中で、2大経済大国によるエネルギー政策の駆け引きと、需要減退への不安を見守っている。
情報源: Bloomberg
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