暗号資産市場が分裂:ビットコイン停滞、金は反落、AI関連株が主導

10x Researchの最新レポートによると、世界的なリスク選好は安定しているものの、投資資金は市場のさまざまな分野に分散して流入している。
伝統的な金融市場は堅調さを見せた一方、安全資産への需要や一部の暗号資産の強さは、投資家が一方向の上昇ではなくボラティリティへの備えを取っていることを示唆している。
米国株市場では、Broadcom、TSMC、Caterpillarといった産業・テクノロジー大手がドル安と国債利回りの下落圧力にもかかわらず、S&P500とナスダックを押し上げた。一方、地方銀行の信用損失リスクや流動性懸念から、防御的資産へのシフトも見られた。

金は一時4,379ドルの高値をつけた後、現在は約4,074ドルまで下落したが、利下げ期待と市場不透明感による逃避需要で依然として高水準を維持している。
暗号資産市場:まちまちの動き
デジタル資産市場では、センチメントが入り混じった状態となった。英国上場のビットコインファンドに対する期待感が一時的に市場を押し上げたが、地政学的リスクや新たな規制報道が楽観論を抑えた。結果として、ビットコインは横ばい推移し、アルトコインの一部で選別的な上昇が見られた。
企業関連の暗号資産株でも明確な二極化が起きた。MicroStrategyの株価は新株発行による希薄化懸念で下落したが、Galaxy Digitalはリテール商品拡大により上昇。Coinbaseはインド市場への進出計画で注目を集め、米国外での成長を目指している。
AI関連マイナーが主役に
ビットコインマイニング業界でも、株式市場と同様に二極化の動きが見られた。AIやクラウドインフラ戦略を採用した企業は、従来型のマイニングモデルに依存する企業を大きく上回った。
Bitdeer TechnologiesはAIコンピューティングへの転換と高い生産実績により投資家の注目を集め、反発を主導。Riot Platformsもデータセンター拡張に伴う強気なオプション取引に支えられた。CleanSparkはビットコイン生産増加と新たな信用枠確保で投資家心理が改善したが、月次収益はやや減少した。
一方、負債依存型マイナーは不安定な動きを見せた。Bitfarmsの3億ドル転換社債発行計画が希薄化懸念を呼び、Core ScientificはCoreWeaveによる買収をめぐる株主対立で市場の信頼を揺るがせた。
Irenの急成長、過熱感への懸念も
10x Researchのデータで際立ったのはIrenである。株価は年央以降500%以上上昇し、AIクラウドサービスへの転換を進めている。
同社は10億ドルのゼロクーポン債発行で拡張資金を調達したが、バリュエーションが過熱しているとの懸念も浮上。一部アナリストは「Irenの株価はビットコイン相場と乖離しており、AIとの連携がマイニング関連株の主要テーマとなっている」と指摘する。
また、TeraWulfも32億ドルの資金調達で新しいデータセンター建設を進め、純粋なマイニング事業からハイブリッドコンピューティング戦略へ移行する業界トレンドを示した。
アルトコイン:選別的な上昇が続く
アルトコイン市場は引き続き選別的な上昇にとどまった。MakerDAOとEthenaはトークン移行やパートナーシップ拡大でDeFi活動を再活性化させた。
イーサリアムとソラナもオンチェーン活動の回復が見られたが、短期的な売り圧力とマクロ不透明感が上値を抑えた。Rippleは10億ドル規模の買収を通じて国際送金事業を強化。
BNB、ドージコイン、カルダノはETF期待とネットワークアップグレードを背景に投機的関心を集めた。トロン、アバランチ、アプトスは機関投資と開発者支援により堅調を維持。資本はミームコインではなく実用性の高いエコシステムに向かう傾向が強まっている。
ビットコインのテクニカル局面:岐路に立つ市場
トレーダーのMichaël van de Poppe氏は、11万2,000ドル付近を重要なレジスタンス水準と指摘。「この水準を明確に突破すれば、ビットコインの強気転換とイーサリアムの新高値更新が現実味を帯びる」と述べた。
同氏は「市場はまさにブレイクの瀬戸際にある」とし、ビットコインがこのレンジで流動性を吸収している段階にあると分析。さらに、10万6,000ドル付近への一時的な下落は「健全な再テスト」であり、買い増しの好機とみている。
I keep mentioning the $112K area.
If that doesn't break, then there's no $ETH ATH and no #Altcoin party, as of yet.
I do believe that we're on edge of breaking it, as we've taking all liquidity around that area in this first test.
A matter of time.
If #Bitcoin reaches sub… pic.twitter.com/1FTBl8YGwo
— Michaël van de Poppe (@CryptoMichNL) October 22, 2025
機関投資家の多くも10万6,000〜11万2,000ドルのレンジを注視しており、10月後半の方向性を左右する分岐点と見なしている。
市場見通し:調整継続か、それともブレイクアウトか
今後の展開は、ビットコインが11万ドル台を維持し、11万2,000ドルの壁を突破できるかにかかっている。もしブレイクが確認されれば、リスクオンムードの再燃とともにイーサリアムや高ベータ系トークンに資金が流入する可能性が高い。
一方で、ビットコインが上値を抑えられ続ける場合、投資家は金(現在約4,074ドル)やAI関連株といった安全資産への回帰を強めるだろう。
現時点で市場参加者は分裂しつつも慎重な姿勢を保っている。伝統市場・金・暗号資産の乖離は、資金が単一のトレンドではなく、複数の物語へ並行的に流れている現実を示している。ビットコインが再び主導権を握るのか、それともAI関連銘柄と金に一時的に譲るのか――それが次の市場サイクルを決定づけることになりそうだ。
本記事の情報は参考情報として提供されるものであり、金融・投資・取引に関する助言を構成するものではありません。Coindoo.comは特定の投資戦略や暗号資産を推奨・支持するものではありません。投資判断を行う前には、必ずご自身で調査を行い、有資格の金融アドバイザーに相談してください。





