BinanceとChainalysis、違法暗号資産活動の測定方法を巡って対立

暗号資産における犯罪活動に関する議論は、それが存在するかどうかではなく、どのように測定するかに関するものである。
- Binanceは直接的な不正流入のみを測定し、報告された犯罪リスクを極めて低く見せた。
- ChainalysisとTRM Labsは、間接的なマネーロンダリング経路が除外されており、全体像は大きく変わると指摘。
- この論争は、暗号資産犯罪統計が基礎データよりも定義に依存していることを示している。
最近の論点は、Binanceが主要暗号資産取引所での不正取引はほとんど無視できると主張したことから始まった。Binanceが引用したChainalysisは、活動全体を考慮するとその結論は支持されないと述べている。
この対立はより深い問題を明らかにしている:暗号資産犯罪は単なる技術的課題ではなく、ナラティブの問題でもある。
Binanceのメッセージ:総取引量に比べ犯罪フローは微小
Binanceが11月中旬に分析を公開した際、主張は明快だった:世界の7大取引所の取引量を確認し、規制当局が正式に違法と指定したウォレットを特定し、そこから取引所に直接流入する額のみを計算する。
その結果は目を引くものだった — 0.018%から0.023%の間。このデータだけで、Binanceは不正流入が極めて低く、主要プラットフォームの中でも自社のリスクが最も低いと結論付けた。
意味合い:暗号資産犯罪問題は大幅に過大評価されているということだ。
Chainalysisの反論 — 数値ではなく手法に焦点
Chainalysisは数値自体には同意するが、その数値が実際に何を示すかには異議を唱えている。
同社によれば、犯罪者はもはや盗まれた資金やランサムウェア資金を大手取引所に直接送ることはほとんどない。代わりに、小規模ウォレットを経由して資金を洗浄した後、Binanceや競合取引所に送る。この方法では、資金は不正とは見なされない。
Chainalysisは、この間接的なマネーロンダリング経路が実務上支配的であることを指摘している。同社のデータセットによると、昨年盗まれた暗号資産は22億ドルで、そのうち17億ドルが最終的に取引所に到達したが、ほとんどは中間ウォレットを経由していた。
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Binanceの指標はこの全カテゴリーを除外している。
TRM Labs:同じデータ、同じ問題
Binanceレポートで名前が挙がった他の分析会社TRM Labsも独自の説明を発表した。Binanceが使用した数値は、TRMの公開レポートではなく、取引所に提供された非公開データからのものであり、Chainalysisと同様に直接的リスクのみを反映しているため、総不正流入を一般化するために使用できない。
要するに、両フォレンジック会社は一致している:Binanceは数値について嘘をついたのではなく、最も狭い定義を選んだだけだ。
背景に潜むコンプライアンス政治
この対立はBinanceにとって重要なタイミングで発生した。43億ドルの罰金を支払い、Changpeng Zhaoの判決およびその後の恩赦を経て、取引所はこれまで以上にクリーンでコンプライアントである姿を示そうと努力している。
ナラティブが重要だ。業界は監査ではなく見出しで評価されることが多いため、規制当局や一般の信じる「違法活動」の定義が政策方向を決定し、取引所間の正当性競争にも影響を与える可能性がある。
業界が解決すべき本当の問題
暗号資産犯罪は消えていない。しかし、どのように測定するかの問題も残っている。規制当局、分析会社、取引所がどの活動を違法と見なすか — チェーン上の最初のウォレットか最後のウォレットか — について合意できなければ、暗号資産犯罪の議論は数値より視点に焦点が当たることになる。
BinanceとChainalysisはデータ自体をめぐって争っているのではなく、定義をめぐって論争している。
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