サム・バンクマン＝フリード、「たった1つの署名がFTXを破壊した」と語る
崩壊した暗号資産取引所FTXの創設者サム・バンクマン＝フリード（SBF）は、すべてを台無しにした瞬間は「数十億ドルが消えた時でも、検察官が現れた時でもなかった」と語る。── それは、ペンを手に取った瞬間だった。
拘置所の中で、彼は『マザー・ジョーンズ』誌のインタビューに対し、「2022年11月にFTXの経営権を譲渡する署名をしたことが、人生最大の過ちだった」と述べた。その署名によって、崩壊寸前の帝国は破産処理のベテラン、ジョン・J・レイ3世の手に渡った。SBFは今、その決断が取引所を救う最後のチャンスを潰したと考えている。
彼によれば、署名を終えてわずか数分後、潜在的な投資家から「FTXを救済できたかもしれない」提案が届いたという。しかしその電話は遅すぎた。数時間後、FTXは破産裁判所に入り、12月には彼自身がバハマ当局に逮捕された。これは金融史上最大級の詐欺事件のひとつとされた。
崩壊後の余波
その後に待っていたのは、前例のない企業の「解剖」だった。エンロン破綻の清算で知られるレイ氏が引き継いだのは、まるでブラックホールのような状況だった。FTXには、顧客資金89億ドルの欠損、複雑に絡んだ記録、そしてAlameda Researchを通じたリスク投資に顧客資金が流用されたという衝撃的事実に憤る世論があった。
レイ氏のパートナーとして法的手続きを主導したのは、大手法律事務所サリバン＆クロムウェル（Sullivan & Cromwell）だった。同事務所は破産申請の数日前、SBFにレイ氏を推薦し、その後1億7,000万ドル以上の報酬を得た。FTX債権者は一時、同事務所を「混乱から利益を得た」として訴えたが、その訴訟は2024年末に取り下げられた。
返済が示すわずかな救いの光
崩壊からほぼ3年後、FTXの清算チームは「不可能」と思われていたことを実現した── 数十億ドルの資金を回収したのだ。2025年9月までに、FTX財団は債権者に約78億ドルを返済。コミュニティメンバーで債権者代表のスニル氏によると、最近の16億ドル分も含まれている。最終的には最大165億ドルの回収を見込んでおり、ほぼ全ての顧客に元本を上回る返済が可能になる見通しだ。
しかし、この「奇跡的な返済」でも損失の傷跡は消えない。FTXの崩壊は暗号資産業界全体に衝撃を与え、連鎖的な破綻と長期のベアマーケットを引き起こした。
本記事の情報は参考情報として提供されるものであり、金融・投資・取引に関する助言を構成するものではありません。Coindoo.comは特定の投資戦略や暗号資産を推奨・支持するものではありません。投資判断を行う前には、必ずご自身で調査を行い、有資格の金融アドバイザーに相談してください。
クラシミル・ルセフ氏は、暗号資産や金融市場を長年取材してきた経験豊富なジャーナリストです。彼はデジタル資産に関する分析、ニュース、予測を専門としており、読者に最新の市場動向について深く信頼できる情報を提供しています。彼の専門知識とプロフェッショナリズムは、投資家やトレーダー、そして暗号資産の動きを追うすべての人々にとって貴重な情報源となっています。
